芸術とわたし

先月、都内有名アーティストの使用するスタジオに私の作品が収められました。

実はこのスタジオに収められた最終型は、私の絵画をアルミ板に印刷したものです。

スタジオがとてもモダンなデザインだったのと、やはりミュージシャンたちが使うスタジオなので、
オーナーさん達と相談し、一点ものの絵画を額装して綺麗に収めるというよりは、ダイナミックに彼らのインスピレーションを刺激する形にアウトプットするべきだと判断し、このような形となりました。

もちろん、いつの時代も一点ものの絵画というのは、複製できる写真よりも価値が高いとみなされますが、 
私は自分の作品をただ一点ものの絵画として提示するだけには考えません。

今までの写真表現を生かして、テーマにより、例えばアルミやアクリル板に大きく印刷し、最終型を作りたいと思います。

なぜならこの新作絵画CHAMPBOULLANT は、感覚をテーマとしているからです。

感覚とは留めることができず、一瞬のものであり、それがとどまることが記憶です。

わたしの絵画はそれと同じで、水の流れを利用し描いていくので、
絵の具が溶け合った瞬間が1番鮮明であり美しく、
乾いてとどまった時には鈍くなり過去、記憶となってしまいます。

ですので私の作品は絵画と、一瞬を捉えることができる写真との両方を最終型として提示します。

これは常に父から教わってきた、
彫刻すれば、絵画がより深く理解でき、
また絵画を描くことができれば、彫刻を新しい形で理解することができるだろう。
つまり立体、平面とも、両極の視点と力量を持つことが大切、という姿勢からきています。
それは客観性を育み、成熟した作品を生み出すからです。

私にとって筆が持てない10年間は苦しい歳月でしたが、
もし筆を持ち続けたとしてもわからなかったであろうことを、私は代わりにカメラで学ぶことができたと思っています。

人は道を閉ざされた時、良くも悪くも新しい道を歩むこととなります。
その時はわからなかったとしても、継続することで必ずその道はどこかでつながるのです。

私は芸術が人々に与える影響力やエネルギーを心から信じています。
今のこの混沌とした世界に必要なのは物質的要素ではなく、精神性、つまり芸術や文学だと信じています。 

これからの10年間は、そんなエネルギーに満ちた作品を作ることのできる作家の1人となれるよう、力強く歩んでいきたいと思います。