
Monk’s Dream
(ジャズピアニスト、セロニアスモンクのピアノから受けた感覚)
新作絵画、”CHAMPBOULLANT”一部公開しました。
病気でずっと筆が持てませんでしたが、10年ぶりに絵画を発表できることをとても幸せに思います。
私は再び絵を描くことをずっと夢見てきました。
写真表現の時も私はずっとカメラで絵を描き続けてきたし、心の中にはいつも絵画がありました。
ここまで治してくれた先生、支えてくれた家族、絵画制作の後押しをしてくれた親友、
いつも私にインスピレーションを与えてくれる神様に感謝の気持ちを込めて。
諦めなければ全ては達成されると信じて。
自然治療で生まれ変わった私の五感は、
ある時は痛々しく私の全身を貫き
ある時は全てを超越する。
きっかけは主治医から大晦日に出たワインの許可。自然治療で鋭敏になりすぎた私の五感に初めてワインが注ぎ込まれた。
その時の感覚は永遠に忘れる事はないだろう。
子供の頃、ワイン愛好家だった父から飲まされたヴィンテージワイン、
王様のようなグラスに注がれた透き通るようなルビー色が今でも目に焼きついている。
味、香り、その時の父の嬉しそうな表情とご機嫌な笑い声、テーブルに並べられた料理…全てが蘇った。
ワインが私の体を駆け巡った後、私は自分の心が解放されていくのがわかり、今まで自分に欠けていたピースがようやく揃ったような感覚になった。
9年間の治療で得た鋭敏な感覚は、私に数々の喜びをもたらしたが、時に辛く恐ろしくもあった。
自然治療で得た感覚、それはいわば動物に近く、五感だけではなく第六感のような何かを予感するものでさえあるのだから。
けれど私はワインという美しいミューズと再び出会い、それらすべての感覚を、時に私を押し潰そうとするものさえも、
美に変えるために筆を取る決心をした。
シャンボランというタイトルはシャンボールミュジニーというワインからとった。
このシャンボールとは、この地のよく氾濫する川を喩えて「沸騰する水」の意味を持つ“Champboullant” に由来する。
例えばワインを飲んだとき五感全てに広がる感覚、その瞬間を絵の具を水に誘導させながら描く。
ほとんど私の力ではなく、これらの形は水によって描かれていく。
作家が絵の具を置く(刺激)することで水を伝い色彩(感覚)が広がってゆく…
感覚とは留めることができず、一瞬のものであり、私たちはこれに対し受動態となる。
私の向き合ってきた自然治療、自然に自分自身を合わせてきたように、絵画も水の流れに(自然に)全てを任せる。
十数年前、身も心も苦しくてたまらなかった絵画が今、私にとって瞑想と化した瞬間だ。