私はいのちが静まりかえる冬が大嫌いだった。
けれど去年から「花物語」の世界をつくるにつれて日本の冬の美しさに魅了されていくようになった。
早朝にその日最初の景色を見に出かけることが大好きになった。
少し前までは色とりどりのあたたかな春が来ることを待ち遠しく思っていたけれど、今は厳しい寒さの中、固く結んだ椿の蕾が柔らかく解けていくその瞬間を心待ちにしている。
それが雪景色ならなお素晴らしい。
すべてをなくした季節、色のない地に滴る赤と、刺すような厳しい空気の中に優美に漂う密やかな香り。
すべてを持ち合わせている春よりそれは多くを語るかもしれない。