ピアニスト、アリス紗良オットさん、
同世代のアーティストとして彼女の発言に賛同します。
私は自分の居場所を国籍の中にではなく、音楽の中に見出してきた。言語や背景、国境を超えて、人と人をつなぐ空間の中に。
私の国では選挙で意思を示すことができる。声をあげる自由があり、私たちは社会としてもっと良くなれるのではないかという懸念を言葉にすることも認められている。しかし、この自由は全ての人に与えられているものではない。
民主主義が法の上では保障されていても、実質的に機能していない国が増えつつある。恐怖、不覚な情報やポピュリズムによって人権は無視され、対話はただのノイズに置き換えられていっている。こうした時代において、いのち輝く未来社会のデザインという、この万博のテーマは私にとって未来への願望というよりも、今この瞬間への問いかけである。
私たちは今日どんな選択を積み重ね、何を強化しているのか。どんな構造を支え、どんな情報を信じるのか。そして社会的構造的な差別を受けている人々の現実をきちんと見つめ、そこにある問題や仕組みを問い直し、そこから学ぶことができるのか。
このあと演奏するベートーベンの「月光ソナタ」。ベートーベンはかつて自由、平等、人と人のつながりを夢見ていた。それは当時の、そして今も決して当然なことではない。空虚な約束のままではいけない。私たち 一人一人が日々の選択の中で果たしていくべき責任だと思う。